記事公開日
最終更新日
電子処方箋の導入完全ガイド|進め方や導入のメリットを解説

電子処方箋とは
電子処方箋とは、従来の紙の処方箋を電子化データとして発行・管理する仕組みです。
医療機関の処方情報は、厚生労働省が運営する「電子処方箋管理サービス」を通じて、
薬局へ安全に共有されます。
※ 処方内容(控え)については、医療機関・薬局向けに外部リンクが提供されています
(医療機関)/(薬局)
紙の処方箋との違い
電子処方箋は紙の処方箋と比べて大きく異なる特徴を持っています。
特に、情報共有・過去の処方履歴の参照・保管方法においてメリットが大きく、
医療安全の向上や業務効率化に直結します。
▼以下は両者の違いをまとめた比較表です。
| 項目 | 紙処方箋 | 電子処方箋 |
| 処方箋の受け渡し | 患者が紙を持参する必要あり | 電子的に薬局へ共有されるため持参不要 |
| 情報共有 | ×:医療機関と薬局間でオンライン 共有不可 |
〇:電子処方箋管理サービスを通じて 共有可能 |
| 過去の薬履歴の閲覧 | ×:他院の情報は参照できない (患者は紙やお薬手帳で確認できる) |
〇:過去の処方・調剤履歴をマイナポータルや電子お薬手帳で確認できる |
| 重複投薬チェック | ×:確認が困難 | 〇:チェックしやすく医療安全向上 |
| 保管方法 | 紙で保管(紛失・劣化リスクあり) | 電子データで保管(検索・管理が容易) |
電子処方箋は、単に紙を電子化したものではなく、医療機関・薬局間での情報共有や、
過去の薬履歴が参照できることで医療安全を向上するために重要な役割を果たします。
電子処方箋の基本的な仕組み

出典:電子処方箋|厚生労働省
医療機関
・オンライン資格確認システムの仕組みを活用した電子処方箋のサーバーを設置
・電子処方箋管理サービスから過去の処方情報等を確認
・電子処方箋管理サービスに処方箋を登録(電子署名をつける)
薬局
・患者の本人確認を行い、電子処方箋管理サービスから処方箋を取得
・電子処方箋管理サービスから過去の処方情報等を確認
・電子処方箋管理サービスに調剤内容を登録
患者
・医療機関で、本人確認/同意を行う(マイナンバーもしくは口頭で同意を行います)
・処方箋を持たずに薬局へ行き、マイナンバーカードで本人確認を行う
・端末画面から電子処方箋を希望し、薬を受け取る
・自分の薬履歴はマイナポータルから確認できます(API連携必要あり)
電子処方箋の義務化とは
電子処方箋の導入は義務化されていません。現時点で医療機関や薬局での導入は任意です。
日本における電子処方箋の導入は、医療DXの推進の一環として進められており、
「電子処方箋管理サービス」は令和5年1月26日から運用が開始されました。
厚生労働省では、電子処方箋の導入に関して「電子処方箋を利用することにより、
複数の医療機関・薬局が持つデータの利活用による、より質の高い医療の提供が図られるため、
積極的に導入の検討をお願いします」としています。
電子処方箋の目的
電子処方箋の目的は、患者の利便性を高めるだけでなく、医療の安全性や正確性を向上させることにあります。
処方情報を電子的に一元管理することで、過去の薬歴や重複投薬の確認が容易になり、
より安全な診療・処方につながります。
また、医療機関と薬局間の情報がオンラインで共有されるため、
連携がより円滑になり、質の高い医療提供が可能になる点も重要な役割です。
電子処方箋のメリット
ここでは、主な利点を整理して紹介します。
◆医療安全の向上(医療機関・薬局)
より正確で安全な処方・調剤が可能になります。
◆情報共有の効率化(医療機関・薬局)
紙の受け渡しや情報の抜け漏れがなくなり、スムーズに業務を進められます。
◆業務負担の軽減(医療機関・薬局)
入力作業やチェック作業も減るため、事務負担が大幅に軽減されます。
◆患者サービスの向上(患者)
また、患者自身がマイナポータルで薬の履歴を確認できるため、自己管理もしやすくなります。

出典:電子処方箋|厚生労働省
電子処方箋のデメリットと導入時の課題
電子処方箋のデメリット
電子処方箋には多くのメリットがある一方で、導入・運用にはいくつかのデメリットや注意点も存在します。
◆導入にかかる費用負担が大きい(医療機関・薬局)
システム導入、ネットワーク整備、など初期費用が発生。
◆電子化に伴う情報漏洩リスクがあり、セキュリティ対策が必須(医療機関・薬局)
オンラインで処方情報を扱うため、通信環境やアクセス管理の強化が必要。
◆利用できる医療機関・薬局が限られる(医療機関・薬局・患者)
電子処方箋に対応していない施設も多く、情報共有が難しい場合があります。
また、患者が希望しても電子処方箋を利用できない場合もあります。
導入時の課題
ここでは、主な導入阻害要因とそれに対する厚生労働省の対策について、紹介します。
➡ 導入補助金の拡充、医療DX推進体制整備加算の創設で支援が拡大。
◆複数のシステム改修が断続的に必要(医療機関・薬局)
➡ 複数システム改修の一体的な導入推進を実施。
◆電子署名対応に手間がかかる(医療機関・薬局)
HPKIカード不足・発行遅延、カードリーダー不足などの問題。
➡ マイナンバーカードを活用した電子署名(2023年12月開始)、リモート署名の推進など、システムベンダへの早期導入呼びかけ
◆患者側のニーズが弱く、希望されないケースがある(患者・医療機関)
患者が希望しないため電子処方箋が使われない場合がある。
➡ 国民向け周知・広報を強化中
参考:厚生労働省「電子処方箋の普及拡大に向けた対応状況等」(2024年9月)
電子処方箋の導入に必要なもの
電子処方箋を導入するためには、以下の環境・機器が必須となります。
・電子カルテ・レセコン
電子処方箋に対応した電子カルテシステムやレセプトコンピュータが必要です。
・オンライン資格確認システム
電子処方箋はオンライン資格確認の仕組みと連携して運用されるため、導入が前提条件となります。
・院内LANと資格確認端末の連携環境
オンライン資格確認端末と、電子カルテ・レセコン等がLAN経由で連携している必要があります。
・HPKIカード(医師資格証)
電子処方箋を発行する際は、紙の処方箋で行っていた署名・押印の代わりに、HPKIカード等を用いた電子署名が必要です。HPKI認証局等へ発行申請を行う必要があります。
※HPKIカードは処方箋を発行する医師ごとに必要です。
・HPKIカード対応ICカードリーダー
HPKIカードに格納された電子証明書を読み取るため、対応するICカードリーダーが必要です。
参考:厚生労働省「電子署名を行うための準備‗医療機関等向け総合ポータルサイト」
電子処方箋導入の進め方
電子処方箋の導入は以下の流れで進めます。
1.システムベンダーへの相談・確認
使用中の電子カルテ・レセコンが電子処方箋に対応しているか、確認する
2.HPKIカードの申請(電子署名を行うため)
電子処方箋を発行する医師ごとに、HPKI認証局等へカードの発行申請を行います。
運用開始の約1-2か月前まで※発行までに時間を要する場合があります
3.電子処方箋の利用申請
電子処方箋管理サービスに対し、利用申請を行います。
➡利用申請後、現在ご利用いただいているシステム(電子カルテシステム・レセコン等)から電子処方箋管理サービスに接続できるようになります。
4.システムの設定・運用準備
システムベンダーと連携し、電子処方箋対応ソフトの設定や接続作業を行います。
5.運用開始後、補助金の申請
電子処方箋の導入が完了し、運用を開始した後に、必要書類を整えたうえで補助金申請を行います。
補助金は、導入完了後に申請する点に注意が必要です。
出典:厚生労働省[電子処方箋の導入検討・運用中の方へ」
まとめ

電子処方箋は、単に紙の処方箋を電子化したものではなく、医療機関と薬局間の情報共有を円滑にし、
医療安全性や正確性を向上させることを目的とした仕組みです。
過去の処方履歴や重複投薬の確認が可能になることで、より安全な診療や処方につながります。
一方で、電子処方箋の導入には、電子カルテやオンライン資格確認システムへの対応など、
院内システムや業務フローの見直しなど、事前に確認・対応すべき事項が多くあります。
電子処方箋は医療DXの推進により、今後さらに普及が進むことが想定されます。
導入を検討する際は、厚生労働省の案内も参考にしつつ、
自院のシステム環境や運用体制に合わせて、無理のないスケジュールで進めることが重要です。